広島カープ新井貴浩のすごさは、黒田やチームメイトからの好かれ具合で分かる

25年ぶりのリーグ優勝を果たした広島東洋カープですが、その立役者は間違いなく黒田投手と新井選手でしょう。優勝が決定したチームの輪の中で2人が泣いて抱き合うシーンには、多くの人が涙したはずです。

中国放送「EタウンSPORTS」コメンテーターで「主砲論 なぜ新井を応援するのか」(徳間書店)の著者である迫勝則氏は、こう語っています。

「12球団の中で、どこにもこういうストーリーはないと思います。エースと4番が同時にいなくなることは普通、ありえない。さらにありえないのは、その2人が同時に戻ってくるということ。創作しろと言われてもできない劇的な物語です。」

2007年オフ、広島カープの黒田博樹(41)はドジャースへ、新井貴浩(39)は阪神へ、それぞれFAで移籍しました。そして、7年後の2015年、2人はそろってカープに復帰を果たしました。

2014年オフに20億円を超えるオファーを断って広島に復帰し、日米通算200勝という偉業を達成した黒田の人気は言うまでもありませんが、新井の人気はそれを上回る勢いを見せています。

例えば、ユニフォームの売上がそうです。1番人気は黒田投手かと思われがちですが、1番は新井選手なのだそうです。

さらに、新井は今シーズン、休み休みではありますがチームの4番に座り、打点王を争うほどの活躍をみせると同時にその少ない打席の中で、2000本安打・300本塁打という偉業を達成しました。

そんな新井に対して迫氏はこう語っています。

新井はとにかく黙々と練習する。そんな大ベテランを見て、選手たちに火がついた。『新井さんでもあんなに練習しているんだ』と。普通、本拠地では昼12時過ぎから選手たちが現れ、1時頃から練習が始まる。主力は2時とか。ところが新井は午前中の10時頃からすでに球場で練習を始めている。結果、早出の若手が続出し、打撃ケージの取り合いになっています」

新井は広島復帰後、その打撃スタイルを変えたといいます。迫氏の分析では、

〈明らかにパワーや瞬発力は低下している。なのに、阪神に移籍する前の新井貴浩よりも、打席に安定感がある。(中略)具体的に言えば、ボールがいちばんよく飛ぶタイミングからボール半個分くらい捕手に近いところでボールを捉えている〉(「主砲論」より)

そうで、

「新井の若い頃の哲学は、『空に向かって打つ』『バットを振り抜く』だった。それが阪神の7年間で完全に考え方が変わりました。カープに戻った時、体の中の新たなネジが巻かれた。打たないかぎり、ファンは誰も復帰を認めてくれない。ファンに認められたい一心で、打席に立っているのです。絶対に三振しない、という執念。それを他の野手も見ています。そして『野球とはこうやるものだ』と感じている。『優勝する』という言葉もそう。今まで選手たちは半ばかけ声的に『優勝する』と言っていました。ところが新井は本気で言っている。それが伝播し、今年の選手たちは皆、新井のように本気で『優勝する』と口にしています」

黒田が新井のことを「アイツの凄いところは、プライドを捨てられるプライド」と言っていたことからも分かる通り、39歳というベテランになっても、常にがむしゃらに、真面目に、一生懸命、野球と向き合っている新井の姿から、影響を受けない選手はいないのかもしれません。

一方で、新井はカープ復帰後、練習・試合以外で丸や菊池などの若手野手を食事に誘い、チームの雰囲気づくりに力を尽くしてきました。それは、通称「新井さん会」と呼ばれる食事会で発揮されているようです。
菊池は新井のことをこう語っています。

「遠征先で新井さんに『明日空いてる?』みたいな感じでよく食事に誘ってもらいました。
(遊撃の田中)広輔とか、一軍にいれば磯村とかも一緒に何人かです。いつも新井さんには
『カープはオレらのチームじゃない。おまえらがチームを引っ張っていけ!』と言われていました

「あとは『遠慮すんな』も新井さんの口癖。もう40歳だっていうのに、大食いで大酒飲みなんですよ。
例えば焼き肉に行ってボクが『もう食えないっす』って言ってもまだ頼む。テーブルを皿でいっぱいにする感じ。
ボクはマイペースで、途中からウーロン茶にしてデザートを頼んで食べたりするんですけど、それでもまだ大量に肉を頼んで『食え食え』みたいな……。そういう時は、一緒に行っている磯村とかが腹がはちきれんばかりに食わされて……
いや、食ってました。そういう席でも新井さんに毎回、『おまえらが引っ張れ』
と言われるもんだから、洗脳じゃないけど、みんながチームを引っ張る意識を持ち始めたのは間違いありません」

新井の後輩選手に対する心配りが、チームの一体感に大きく貢献していることは言うまでもありませんが、それは新井の人柄ゆえに出来ることではないでしょうか。

また、4月に2000安打を達成した後も好調をキープし続け、シーズンを通してチームを牽引してきたことは間違いありません。

昨オフに、黒田に現役続行を決意させるよう説得したうえ、距離があった黒田と若手投手の間に入って、若手がグラウンドで疑問点などを聞いたりできるように常に気を配ってもきました。優勝するチーム作りのために、そんな橋渡し役までも買って出ていたのです。

新井は、野手最年長の39歳であるにもかかわらず、チーム内で最も練習し、試合でも最も声を出し、黒田の“マネジャー”的役割も担いながら、誰よりもファンのことを思って常に全力でプレーしてきました。選手として素晴らしい実績残しただけでなく、リーグ優勝という結果にまで導いた新井ですが、いまだに謙虚な姿勢は変わりません。

そんな新井がいれば、黒田が引退後も、再びリーグ優勝、そして日本一を達成できるにチームとして、更に飛躍できること間違いなしです。来シーズンも新井の活躍から目が離せません。

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